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企画

2024.08.01

Product Report vol. 4 タオルを想うせんたく。

書き手 | 山岡 貢二

はじめまして。企画の山岡です。みなさんはタオルを使い込んでいくうちに、こんな経験はありませんか?

 

「柔軟剤を使っていたらタオルが水を吸わなくなった
「洗濯して外に干していたらごわごわになった

 

この度コンテックスが初めてオリジナルのタオル専用洗剤を発売します。
コンテックスにとって新しい領域に足を踏み入れた、その開発エピソードをお伝えしようと思います。

1.なぜ、タオル会社が洗剤をつくるのか。

以前から当社のタオルを使っているお客様より、タオルの洗い方・乾かし方についてのお問い合わせが多数ありました。

そのたび、柔軟剤を使いすぎると吸水性が落ちたりパイルの糸引けの原因になることや、洗剤だけで洗って天日干しを続けると固くごわついてくる事をお伝えしていました。タオルの肌ざわりをよくしたいときは柔軟剤を使うのも一つの方法。今までの経験からだいたい5回に1回の割合で柔軟剤を入れて洗うことをおすすめしていました。

そんな中

『洗剤で洗うだけでふんわり仕上がり、吸水性も落ちない』

こういう洗剤をつくることはできないかと考えるようになりました。
コンテックスは創業当時から糸の種類や織り方にこだわったモノづくりを続けています。なら次にできることは何だろうか?吸水性と肌ざわりが長続きする洗剤はできないのだろうか。

 

2.自然派化粧品の会社との共同開発。

コンテックスはタオル生地を使ったベビーの商材も多数揃えており、作るなら自然由来の洗剤が良いと考えていました。そんな中、兼ねてより取引があったことをきっかけに自然派化粧品の会社 パルセイユ株式会社の金井社長に相談させていただきました。

パルセイユさんは、一人の研究者の「石鹸の製法を紀元前の原点から。」という想いにより生まれた自然派化粧品の会社です。創業者自らの肌トラブルの改善をきっかけにして生まれた当社では独自の製法により製品づくりを行い、防腐剤などの石油系成分を配合しない無添加化粧品を開発されている所です。

パルセイユ株式会社

ニュース・お知らせ 芦屋ハーブバレー 「安全安心な商品を」とのお客様の声にお応えするため、芦屋町山鹿の豊かな里山、里海を活用し、化粧品の原材料栽培、レストランで提供する食材に至るまでの自社製造を目指して芦屋ハーブバレーを作りました。 「種まき→栽培→収穫→原料抽出→原料ブレンド→品質管理→製品製造→製品出荷」までを一貫して行うことでトレーサビリティを実現しています。 READ MORE 九州芦屋の地方創生 当社が福岡県の芦屋町への移転を決意した最も大きな理由は、芦屋町の美しい海岸線を一望できる景観の良さです。 当社のような自然派にこだわった商品開発を行う企業にとっては、商品そのものの良さのみではなく、その商品がどのような場所で、製造・開発されているのかは非常に重要な要素の一つです。 READ MORE

 

このような信頼できる確かな背景があるので、相談させていただくのに迷いはありませんでした。「一度こちらでじっくりお話しましょう」とお誘いいただき、車で400㎞離れた福岡県芦屋町までお邪魔することに。

同社は響灘を見下ろす小高い丘の上にあり、着くと挨拶もそこそこに軽トラックの荷台に乗り込み、私有地の自社農園へ。そこには里山を切り開いた有機JAS認証を受けた広大な農場に様々なハーブが栽培されていて、ここで作られる化粧品の原料の8割がこの農場で収穫された原料を使用しているとのことでした。
またこちらで作られる石鹸は昔ながらの手法で作られ、熟成庫でゆっくり時間をかけて熟成されるそうです。

 

3.初めての“タオルのための”洗剤。

ひととおり施設を説明してもらった後、いよいよ本題の洗剤づくりについてのミーティングを行います。
まずは作りたい洗剤についてあらかじめ用意していた、いくつかのポイントを次のようにあげてみました。

  • タオルがふっくら柔らかく仕上がり、柔らかさが持続すること
  • 綿本来の吸水性を発揮すること
  • 汚れもしっかり落とせること
  • 自然で心地いい香りが残ること
  • 環境負荷にも配慮したものであること

 

これらを相談すると「わかりました、だいたいのイメージはつかめたのでまずは一度サンプルを作ってみましょう。」と気持ちのいいお返事が帰ってきました。実は他にも要望を出していたのですが、あれこれ欲張り過ぎて前に進みそうになかったので取捨選択のうえ、上述の内容に収まりました。

4.タオルにとって理想の洗剤って?

開発を依頼してから約一か月、サンプルが出来あがってきました。さっそく数人のスタッフに洗濯してもらい感想を聞いてみたところ次のような声が集まります。

 

  • 長年使っているタオルが数回の洗濯でずいぶん柔らかくなった。
  • 洗濯機から取り出す時にいつもよりスムーズにほぐれた。
  • 洗剤残りもなく、吸水性も問題なし。
  • 染みついた汚れは残ったが、日常の汚れについてはきれいに落ちていた。

 

私も繰り返しタオルや衣類を洗濯してみて、柔軟剤を入れずにここまで柔らかく吸水性も良く仕上がったことでまさに理想に近い洗剤が出来てきたという手ごたえを感じました。

しかしその後は洗浄力とタオルの風合いのバランスにかなり悩みました。

風合いを重視すると洗浄力が低くなってしまう。汚れもしっかり落としたいので洗浄力を上げるため石鹸成分を増やしてもらったりと、進めていくにつれどのようなバランスが良いのかわからなくなっていきました。

タオルを洗濯し続けると固くなる原因として、石鹸カスのすすぎ残しも大きな理由の一つです。
その石鹸カスのすすぎ残しを考慮して、石鹸成分は使用せずアミノ酸系の界面活性剤を主原料とすることで、風合いが変わらず吸水性が落ちない配合にしてもらいました。

こうしてタオル専用の洗剤は少しずつ形になっていきました。

5.日本は世界的にみても軟水の国と言われるけど
地域差があるらしい。

日常的に欠かすことのできない“水”に対しても考える必要がありました。
普段何気なく使用している水ですが、突き詰めていくと日本の中でも地域によって軟水・硬水と分かれているそうです。金井社長のアドバイスのもと水の硬度に左右されない洗剤にするため、こちらからタオルを送り福岡のパルセイユさん(硬水地域)と今治(軟水地域)両方で洗濯テストを重ねながら模索していきました。


今治や東京のスタッフにも洗濯試験をしてもらったり、社内の洗濯機も常にフル稼働でタオルを何度も洗濯しました。その結果、どの地域にも適した理想的な洗剤に近づいてきました。

6.タオルのライフサイクルについても考えてみる。

泡切れもよく洗浄時間も短く済み、生地への残留が極めて少ないのでタオルが長持ちします。
自分をいたわるようにタオルも最適なケアを施すことで、寿命がぐっと長くなります。

タオルのライフサイクルを長くすることも、エコな取り組みの一つ。

出来上がった洗剤はパルセイユさんの自家農園で採れたものをはじめ100%が自然由来の成分で出来ており、人にも環境にもとてもやさしいものに仕上がっています。

また蛍光増白剤を含んでいないのでオーガニック製品などの自然な生成り色の良さも損なうことなく洗い上げることができます。

7.モノづくりを改めて捉え直した洗剤づくり。

こうして、試行錯誤を繰り返し、ようやく形になりました。
はじめは単純に『柔軟剤なしで洗えて、柔らかく水もよく吸う』洗剤を作りたいというところから始めた洗剤開発でしたが、進めていくうちに余計なものを入れずにきちんと正直に作られたものこそがタオルも傷めず、使う人の肌や環境にもやさしいという結果にたどり着きました。

 

洗剤開発に携わって、モノづくりの根幹を改めて考えるきっかけになりました。

 

私たちの作ったタオルが少しでも長く良い状態で使っていただけるよう、あえてネーミングは『今治のタオルメーカーがタオルのために作った洗剤』とさせていただきました。

ですが、この洗剤はタオルだけでなくご家族の衣類などにも使っていただけます。小さいお子さまやお肌がデリケートな方にもお勧めです。

この機会に、洗剤を通してタオルの洗い方について少し考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

プロフィール
山岡 貢二コンテックス株式会社 企画

部署の垣根を超えて相談を受ける、聞き上手。KONTEXの企画部部長。今治の自然の恵み豊かな島しょ部で生まれ、コンテックスで働きながら休日には海で釣りを楽しみ、晩酌のビールが癒し。アーモンド比率多めのナッツにはまっています。

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