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2023.08.03

「コットンパイルTシャツ」誕生の話

書き手 | 近藤剛文

タオル生地を使ったTシャツ、「コットンパイルTシャツ」が発売となりました。
コンテックスは長年タオルの製造を行っているのですが、Tシャツを作るのは初めての経験になります。タオルメーカーだからできることもあったし、タオルであるがゆえの問題もいっぱいありました。
今回はそんな開発の苦労話も交えながら、「コットンパイルTシャツの」良さをお伝えできればと思います。

1.タオル屋がバスローブではなく、リラックスウェアを作ろうとおもったわけ。

タオルを使ったリラックスウェアが欲しいという要望は以前からありました。
そういった類の商品としてはバスローブがあるのですが、日本ではあまり普及していません。
バスローブは大きくて重たいので家でくつろぐという感じではないですし、乾かすのにも時間がかかるので毎日洗濯するのも大変です。

ではタオルを使った、リラックスウェアって…?

お風呂上りやサウナの後、家で部屋着として素肌に着るとしたら多くの人がTシャツを着ると思います。くつろぐひとときにリラックスウェアとしてタオルを素肌に着てほしいという思いがあって、タオル生地で仕立てたTシャツを作ろうと考えました。

2.最適な生地を追い求めて。

今回のTシャツをつくるにあたっては、タオルの特性を活かして汗をしっかり吸水すること、毎日気軽に着れて、洗濯や乾燥についても家事の負担にならないことを目指しました。

まずは生地選びから。吸水性だけ考えればパイルの毛足の長いタオル生地を使えば良いのですが、それでTシャツを作ると暑くて重たくて着れたものではありません。
逆に薄手のガーゼ生地だと水を吸うとべちゃっと肌にまとわりついてしまいます。
暑い夏、肌にまとわりつかずサラッと着られ、軽くてストレスが少ない。そんな生地を探しました。

3.たどり着いた答えは『薄い、軽い、長い』あのタオル。

様々な生地を試した結果、最適だったのは手ぬぐいタオルの生地でした。

手ぬぐいタオルは名前のとおり、日本で昔から親しまれている“手ぬぐい“の特徴を持ったタオルで、薄手で持ち運びが便利なうえに吸水性もあります。
コンテックスでは「薄い、軽い、長い」の布ごよみシリーズとして人気商品となり、20年もの間コンテックスを支えてきました。
首にかけて汗をぬぐったり、頭に巻いたり、温泉に持って行って体を洗ったり、色々な使い方ができる日本の風土にあった商品です。そして、そんな“布ごよみ”の特徴がTシャツの素材としてもぴったりでした。

何よりも良かったのが着心地が軽いということ。タオルを着ているというよりも羽織っている感じで、ふわっと風が通っていきます。
また、パイルで汗を吸水することに加え、表面の凹凸のおかげで肌にくっつかずサラッとした感覚で着ることが出来ます。
これらはタオルを着ることの大きなメリットです。

 

4.『縮み』に悩まされた苦悩の一年間。

ただ一方で、タオルだからこその問題もあります。一番苦労したのは洗濯による縮みでした。

通常、タオルは洗濯をすると縮むのですが、タオルとして使っているかぎりはそんなに意識をすることはありません。多少縮むことはありますが、タオルとして使用することに大きな問題はありません。

ただこれがTシャツになると話は別です。

特に頭を悩ませたのは、各家庭で普及してきたドラム式洗濯機です。
ボタンひとつで洗濯から乾燥までしてくれるとても便利な家電ですが、タオルにとっては良いことばかりではありません。

ドラム式洗濯機は、洗濯時に使用する水の量が少なく、衣類をドラムに叩いたりこすったりして汚れを落としていきます。ただ、そうすると洗濯物同士がこすり合わさって摩擦が大きくなり、生地の縮みにもつながっていきます。また、脱水して皺のある状態で乾燥をさせるので、吊り干しに比べるとやはり縮みやすくなります。

縮みによる型くずれに対応するために、試行錯誤を繰り返しました。
色々な縫製方法を模索したり、染色工場にお願いして生地の洗い方や乾燥の温度を変えてもらいました。
理屈があって糸口を掴んだというよりも、何度も失敗していたら偶然正解の道につながったといった感じです。
何度やっても上手くいかず、得るものがないまま時間が過ぎていくような感じでした。
それでも諦めずに続けていれば解決策は見つかるものです。

たくさんの人の協力と、多方面から縮みに対してアプローチすることにより洗濯・乾燥をしても型崩れしにくくなったと思います。
残念ながら天然繊維である以上全く縮まないということは難しいですが、ドラムで洗濯・乾燥をくり返しても、ほぼほぼのサイズはキープできるようになりました。

5.こだわりはとことん、タオル生地を使うこと。

通常のTシャツは首回りにゴムを使うのですが、タオル生地とゴムが見た目に合わなかったのでエリもタオル地にしようと思いました。ゴムを使って、見た目に不自然で安っぽくなることを避けたかったのです。
ただエリをタオル地にすると、今度は伸縮性がないので頭が入らないという問題が出てきます。ストレスなく着るにはどうしたら良いのか。また、着てからも首回りができるだけ綺麗に見えるように、何通りもパターンを試しました。試行錯誤を繰り返し、首回りにゴムを一部使うことにより体のラインに沿うようなパターンをこだわって作ることができました。

そうこうしているとサンプルの数もかさんできます。完成サンプルでいうと、50枚くらいかと思います。
ただし生地の縮みテストを行ったり、エリまわりの接着芯のテストをする場合は完成サンプルまでは作らないので、テスト数でいうともっと多くなります。何度も生地を織ってもらったりたくさん縫ってもらい、覚えきれないほどのテストを繰り返しました。
「次のテストでは良い結果が出るだろう」と毎回思いながら繰り返していたらあっという間に時間が経っていました。
結局は世に出るまでに1年半もかかってしまいました。
しかし苦労が多かったからこそ得るものも多かった、そんな思い入れのある商品です。

通気性・吸湿力に優れているので、着た時に生地がまとわりついてこず、短パイルがサラッとした肌ざわりでムレにくい“着る”タオル。洗濯・乾燥を繰り返しても型くずれしにくく、気兼ねなく洗濯できるのでサウナやお風呂上りのくつろぐひと時に。また、ビーチサイドやプール、温浴施設でも活躍してくれます。

そんな「コットンパイルTシャツ」が皆様のリラックスタイムに欠かせないものとなり、心を癒してくれる存在になれば嬉しいです。

プロフィール
近藤剛文コンテックス  代表取締役社長

一途にやり遂げるこだわり派。KONTEXの代表取締役社長。 紡績工場にて修行後、家業に戻る。 営業や商品開発でモノづくりに関わる。2023年8月、5代目社長に就任。 大雑把な性格で、愛用している腕時計の時間の調整方法が分からず、 30分進んだまま使用を続けている。

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